されど。人の人生に向き合う仕事
こんにちは。アクシス代表の末永です。社長ブログです。
弊社アクシスは、東京渋谷でアクシスという20代・30代を中心とした若手ビジネスパーソン向けのキャリア支援事業を複数提供しています。
キャリアコーチングサービス「マジキャリ」、転職エージェント「すべらないキャリアエージェント」などを提供しています。
このnoteでは、「すべらない転職youtubeチャンネル(延べ視聴回数360万回)」や「すべらない転職(読者45万人/月間)」では伝えられていない転職やキャリアノウハウだったり、社長としての想いや考え方について、インサイドストーリー的な感じで発信していきたいと思います。
※yahooニュースや東洋経済、オールアバウト、新R25などのメディアへの寄稿や、書籍「キャリアロジック」「成功する転職面接」を出版する等、転職やキャリアについて情報発信もしていますので宜しければ読んでみてください。
偉大な愛すべき先輩
先週末に、11年前、起業直後からずっとお世話になってきた先輩が不慮の交通事故により亡くなりました。
火曜日にその事実を知り、あまりに突然の事でまだ整理できていない事だらけですが、とても寂しく、悲しいです。
身近な人の死がそんなにはないですが、人の死がこんなにも悲しいのは人生で最大かもしれません。
やすさんが自分の人生にとって精神的な支えや支柱になっていたのだと今さらながらに改めて気がつき、もっと一緒にやっておきたい事がたくさんあったなと思います。
やすさんは、自分の年齢は2つ上で、リクルートエージェント新卒入社の先輩・後輩というつながりで、在籍時には関わりなく、お互いに独立した後にリクルートエージェントのOB会でお会いしました。
起業したばかりの自分に気さくに声をかけてくれて、池袋のとこなつ屋というバーにそれ以降通わせてもらい、その後は銀座にバーをオープンしてからはそちらに通わせてもらってきました。
僕は普段一人ではほとんどお酒を飲まないし、池袋も、銀座も仕事や人と会う時くらいしか行かないのですが、やすさんのバーへは2~3ヶ月に一度は一人で通い続けていました。
後輩に対する愛
やすさんは僕が表するまでもなく、愛溢れる人です。
僕自身、20代後半で起業してからずっとやすさんの愛に救われてきました。
起業してからは当たり前ですが、上司や先輩社員は存在しないわけで、当時20代だった自分は不安と孤独な事が多かったのですが、一人でやすさんのバーに行きやすさんと話をする事が一つの癒しの時間になっていたのだと思います。
いつでも笑顔で明るく絡んでくれ、池袋や渋谷で飲んだ後に二人であてもなく、道路を延々と散歩、徘徊しながら青臭い事を語り合う事も多くありました。
30代を超えて、青春を共有できる先輩でした。
弊社のインターン生や社員に対する愛
やすさんは正直自分とは性格や特質が真逆なタイプで、ITに疎かったり(笑)、複雑で小難しい話は嫌いで、シンプルで根明で率直にものを言ってくれるため、自分で小難しく考えがちな自分にとって救われる事が多かったように思います。
それは弊社のような名もなきベンチャー企業にインターンや新卒としてリスクをとって入社した社員にとっても同じで、僕が直接社員をフォローしたり、ものを言うよりもフラットに社外の頼れる兄貴的な存在のやすさんにアドバイスをしてもらえる事の方が社員にとっても助けになるだろうと思い、厚かましくも毎年新卒が入る度に、定期的に銀座のバーに新卒社員たちを連れて、やすさんに話をしてもらうのが恒例になっていました。
仕事に対する愛
そんな特質の正反対な先輩でしたが、当初10年前からずっと共感していたのは、人材業界・エージェント業界の中でも珍しく「企業ではなく、個人を向く姿勢」。さらには、ミドルやハイクラスという転職者ではなく、まだ何者でもなくキャリアとしては正直引き合いが少ない転職者をいかにキャリア形成をサポートするかという事へのこだわりでした。
今でこそ日本の人口減少・売り手市場が加速化して、人材業界・エージェント業界も、求人企業ではなく個人を向くプレイヤーも増えてきましたが、10年前に同業界やリクルートの先輩たちにそれを熱く語っても「末永くん、その考えはとても素晴らしいと思うけれど、ビジネスとしては厳しいと思うよ」と本当に全員に言われていました。
ただ、やすさんだけは違いました。
「うん!儲からないかもしれないけど、むちゃくちゃ正しい!agree!!応援する!」
シンプルにそう言ってくれました。
やすさんは人材業の人というよりも、あくまでバーの店主・バーテンダーという事もあるかもしれませんが、toCの視点で業界や仕事に向き合っている方でしたし、彼が出版した転職関連の書籍の内容はほとんど僕自身の意見と合致しており、さらには、それをやすさんの持ち前のカジュアルさやシンプルさを発揮して、明るくわかりやすく伝えていらっしゃるのがとても印象的でしたし、本当に実践的な内容だと思います。
やすさんとは、定期的に長電話をしていましたが、「ゆうた、最近のアパレル販売や客室乗務員とかの接客業経験のみの人にとってのセカンドキャリアとして有望な求人やキャリアってどんなのあるかな〜?」「おそらくですが・・」という情報交換や議論は、僕にとって至福でとても楽しい時間でした。
正直、人材業界の人と情報交換をすると、「最近成長しているベンチャー・スタートアップ、面白いビジネスモデルの会社、決まりやすい求人、大量採用案件って何がある?」といった企業や自社視点での会話や質問が多い中で、やすさんとは唯一温度感が同じで「転職者・個人のキャリアや人生にとって有用な求人やキャリアステップって何がありそう?」という同じ視点で貪欲に情報収集をし合えていたからです。
そんな会話ができる唯一無二の同志がいなくなったと思うとやはり寂しいです。
創業当時の自分一人の時代から知ってくれているやすさんに、定期的に会社の成長を報告しながら「転職者や個人に向き合い続けていても、意外と儲かりましたよ(笑)」と言いたかったです。
転職者・個人に対する愛
僕が一人エージェント時代にこだわっていた仕事の仕方として、転職者個人の転職・入社後の定着・活躍、そして中長期のキャリアステップまでコミットすることがあります。
そのために、選考段階や内定段階で、企業に対して、配属先や直属上司の調整まで踏み込む事が多くありましたし、「この方はこういう弱みがあるけれどこういう魅力や強みもあるのでこういった関与やマネジメントをしてあげてほしい」と厚かましくも介入させていただいていました。
同時に、転職者個人にも「入社はゴールではないし、おそらく入社して半年間は正直こんなしんどい事がほとんどだと思います。でも、ほとんどの人が同じ道を辿るし、それを乗り越えられればこんな経験・スキルとして評価され、こんな次のキャリアステップに繋がっていくので、それを前提としてまずは行動量だけに集中して一定期間はやり切る事を意識してくださいね。」とご本人のコミットメントを引き出していました。
今回、ヘッドハンティング会社ジーニアスの三上さんがFacebookに投稿している追悼のコメントを拝見して、僕は思わず涙してしまいました。(勝手ながら投稿の一部を引用させていただきました)
そんなBAR店主と客の付き合いが、今年の年始に少し変わった。彼の副業でもある人材紹介でジーニアスのコンサルタントの採用を依頼したのである。結果としては1推薦1決定という、我が業界におけるベストプラクティスが達成され、1名の素晴らしい同僚が入社する運びとなった。この採用の過程で私は彼から多くの学びを得た。私にとってはこれが彼の形見になるんだろうが、素晴らしく愛の溢れる推薦状を頂いた。一般的に我々人材紹介業においては、エグゼクティブでもローエンドでも担当コンサルタントが推薦状を作成し、求人企業に書類選考を依頼する。クオリティレベルの差が極めて大きいものの、多くはJDとキャンディデイトのスキル・経験のマッチングについて記載をする。紹介会社にとっては採用決定が1つのゴールであり、入社後のクライアントインターナルなフェーズでは関与が限定的になるので、スペックマッチングをどのように表現するのか?に収斂することは当然と言えば当然である。但し彼の推薦状は圧倒的に異なるのである。まずキャンディデイトの人生への踏み込み具合が大きく異なる。これまでの生い立ち、人生の転機、意思決定基準、苦手領域や活躍できなかった外部環境が具体的に記載される。加えて採用企業の関係者の考え方、経営者の経営哲学を加味した上で、推薦した理由が述べられる。(ただここまでは、できるエージェントは行う)更にその先は彼の独自の世界線である。キャンディデイトにどのように幸せになってほしいのか、ビジネスだけではなくキャンディデイトの日常、家族を含めたライフの設計の未来を語るのである。この推薦状を受け取ってキャンディデイトを採用した企業・経営者にはしっかりその意図を組んで、キャンディデイトの受け入れ態勢を整備し、応援し一緒に成功をコミットする、という力学が自然と発動するのでだ。入社後のオンボーディングとはまさにこの受け入れ側の覚悟の度合いで変わるものである。ある意味コントロール外の領域であったとしても彼の溢れる愛がキャンディデイトを守ることに繋がるのである。私の追求するエグゼクティブサーチ、ヘッドハンティングはほぼ100%クライアントの成功のために振り切ったモデルである。キャンディデイトも一般的にはビジネスの成功者ばかりで、機会・環境を整備したらあとはバッターボックスでホームラン打ってくださいね、という世界である。他方で100%キャンディデイトに振り切ったモデルを彼は追求してきた。真正面からキャンディデイトの人生を受け止め、深く傾聴し、幸せを願い、それが一番達成できる環境を探す。そんな美学を感じる素晴らしい仕事であった。恐らく他にもまだまだ故人から教わったことは沢山あるのだが、これから少し時間をかけて、彼との日々を偲びたい。あー、やっさんともう1度飲んで大いに語りたかった。残念でならない。謹んでご冥福をお祈りいたします。
やすさんは弊社にも人材をご紹介いただいた実績があったり、やすさんがサポートしている転職者を弊社でサポートしてもらいたいとご依頼されて僕自身が対応していた事が多いのですが、いつも変わらず同じご姿勢でした。
ですのでその際のメッセージのやりとり内容は、やすさんの転職者に向いた愛が溢れる洞察や仮説で何往復も、長文でいっぱいでした。
「ああ、このやりとりがもう叶わないのか」と思うと悲しく、情けなくも涙が止まらないのですが、僕たちは勝手ながらやすさんの意思を継いで、「たかが」ではなく「されど」の精神で、転職者・個人に向き合う誇り高いプロの仕事を全うし続けたいと改めて思いました。
やすさんともうお話したり、ご一緒できないのはとても信じられません。
僕自身も不器用ながら、やすさんのように後輩、社員、お客さん達にたくさんの愛を注いて生きていくべく、精進いたします。
心より、ご冥福をお祈りします。
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