薬剤師の服薬指導とは?流れや意識すべきポイント、オンライン服薬指導まで解説!
薬剤師のおこなう服薬指導について、業務の流れや患者さんと接する際に意識すべきポイントとあわせて徹底解説します。
また、オンラインでの服薬指導についてもご紹介します。
すべらない転職が紹介するサービスの一部には広告を含んでおり、当サイトを経由してサービスへの申込みがあった場合には、各企業から支払いを受け取ることがあります。ただし、ユーザーの利益を第一に考え客観的な視点でサービスを評価しており、当サイト内のランキングや商品の評価に関して影響を及ぼすことはございません。
薬剤師の服薬指導とは
薬剤師の重要な仕事の1つに「服薬指導」があります。
服薬指導とは患者さんに対して医薬品の正しい情報を提供することで、薬の適切な服用方法や注意点などを共有し、医薬品を安全に使ってもらえるよう支援していく仕事です。
この服薬指導は、薬剤師法第25条の2にも定められている薬剤師のおこなうべき義務にもなっています。
最近では、医薬品の情報を一方的に伝えるのではなく「かかりつけ薬剤師」として、患者さんの体調の変化や生活習慣、健康への悩みなどを積極的にヒアリングしていき、服薬指導が副作用の早期発見や継続的な健康支援にもつながることが期待されています。
末永
オンライン服薬指導も始まっている
自宅にいながら服薬指導が受けられるよう「オンライン服薬指導」も始まっています。
オンライン服薬指導とは、ビデオ通話で薬剤師から服薬指導を受けることができるサービスで、法令改正により令和2年9月からスタートしました。
オンライン服薬指導を受けた後、医薬品は直接薬局で受け取る、もしくは後日郵送するなどの対応が可能です。
オンライン服薬指導は、スマホなどを利用して薬局に足を運ばなくても服薬指導が受けられることから以下のようなメリットがあります。
- 時間を有効活用できる
- プライバシー保護ができる
- 感染症リスクが軽減される
- 家族と服薬指導を受けられる
- 薬の在庫を確認しながら指導を受けられる
オンライン服薬指導については、厚生労働省が「オンライン服薬指導の実施要領について」において「薬局開設者 は、オンライン服薬指導を実施する薬剤師に対しオンライン服薬指導に特有の 知識等を習得させるための研修材料等を充実させること。」と規定しており、各社で研修などが実施されています。
また、オンライン服薬指導のシステムは各社によって異なるので気になる人は確認するようにしてみてください。
薬剤師の服薬指導の流れ
ここでは薬剤師の服薬指導の流れをご紹介します。
服薬指導の具体的な流れは以下の通りです。
お声がけ
処方箋をもとに薬の調剤が完了したら、患者さんへお声がけをおこないます。
お声がけの際には、マナーと丁寧な挨拶、自己紹介などが大切です。一見些細なことでも第一印象を良くすることで、患者さんと信頼関係を築いていくことができます。
お声がけから良好な信頼関係を築くことで患者さんも健康の悩みや体調について話しやすくなり、患者さんの健康支援がしやすくなります。
末永
薬学のプロとして信頼されるためには、第一印象やマナーが重要ですね。
ヒアリング
ヒアリングは、初めて薬局を訪れた患者さんやお薬手帳を持っていない患者さん、継続的に訪れている患者さんで伺う内容が異なります。
薬局に薬歴や記録がない患者さんに関しては以下のような内容のヒアリングが適切です。
- 既往歴
- アレルギーの有無
- 併用薬の情報
- 過去の副作用情報
初めて薬局に訪れる場合には、事前に問診票を記載してもらうことが多いため問診票を見ながら話を聞くことが可能です。問診票で気になる部分があればこの時に確認することも大切です。
一方、継続的に訪れる患者さんに対してはある程度の情報を把握しているため、病状の経過などを中心にヒアリングをおこないます。
- 病状の変化や経過
- 副作用の有無
- 現在の調子
このヒアリングを通して、処方された医薬品が適切かどうかを改めて判断するのも薬剤師の大切な仕事です。
処方する医薬品の説明
ヒアリングの後は処方する医薬品の説明をおこないます。
基本的な説明事項は以下の通りです。
- 薬品名
- 効能・効果
- 服用方法
- 服用のタイミング・回数
- 副作用
- 飲み合わせ
- 保管方法 など
上記情報をしっかりと伝えたら、処方薬を薬袋に入れて、一緒にお薬手帳、領収証、お薬の説明書を渡します。
末永
患者さんが日々の服用を安全にできるよう、個々に合わせた対応を心がけましょう。
例えば、複数の薬を飲むのを忘れがちの患者さんには、付箋をつけてあげるなどの心遣いも必要です。
不明点がないか確認
医薬品の説明の後は、患者さんに不明点がないかをしっかりと確認しましょう。
副作用が出た場合にどうするべきか、緊急の際の連絡先を共有しておくと患者さんも安心して薬物治療をおこなうことができます。
クロージング
患者さんの不明点を解消したらクロージングをおこないます。
クロージングとは、患者さんをお見送りすることです。「お大事になさってください」などの相手の健康を気遣う言葉をかけて締めくくります。
このように、最後まで誠心誠意、丁寧に対応することで患者さんの信頼を得られるためこちらもお声がけと同様短い時間だとしても重要な流れです。
薬剤師が良い服薬指導をするポイント
ここでは薬剤師が良い服薬指導をするポイントを説明していきます。
以下のポイントを意識することで、より信頼される薬剤師として服薬指導に従事できるようになります。
信頼関係を構築する
患者さんに合わせた丁寧な服薬指導をおこなうには、患者さんと信頼関係を構築することが大切です。
薬剤師の服薬指導は一方的にすれば良いものではありません。患者さんの話しに耳を傾け、お医者さんとのコミュニケーションで話せなかった不安まで引き出してあげることも薬剤師の大切な役割です。
丁寧で親身な接客を心掛け信頼関係を築くことで患者さんとの何気ない会話が生まれ、生活習慣や食生活などが見えてくることもあり、その結果より個人に寄り添った服薬指導が可能になります。
例えば、体を動かすことが好きな患者さんには体を動かした前後何時間は薬を服用しないほうが良いなど、個人に合わせたアドバイスが可能です。
どんなことでも相談できる「かかりつけ薬剤師」として服薬指導に従事できるよう、丁寧なコミュニケーションから信頼関係を築くことを意識しましょう。
目線や姿勢を確認しながら話す
患者さんの目線や姿勢を確認しながら話すことも大切です。
服薬指導をしていくなかで、時には大切な話であってもあまり話を聞いてくれない患者さんもいます。
しかし、患者さんの安全で適切な薬の服用を支援するために、しっかりと伝えるべき内容を患者さんに伝えなければなりません。
患者さんがしっかり薬を目で確認しているか、しっかり聞く姿勢があるかを確認しながら話すことで、患者さんが説明を聞いているかどうかの判断がしやすくなります。
もし患者さんに説明があまり伝わっていないと感じたら、付箋でメッセージを残しておくなど間接的な指導をすることができるようになり、安全で適切な薬の服用につなげていくことができます。
副作用の説明は不安を与えないようにする
服薬指導の副作用の説明では、患者さんに不安を与えないようにすることも大切です。
薬の副作用は多く言われれば言われるほど、誰しも薬の服用に不安を覚えてしまいます。
とくに、複数の薬を服用しなければならない場合は、副作用が多くなり、人によっては効果よりも副作用が気になってしまうという人も出てくる可能性が高いです。
そうならないためにも、副作用の伝え方を工夫することが大切です。
例えば、本当に今伝えるべき副作用なのかを考えることや、本当に伝えたい副作用だけを強めにハッキリ伝えるようにし、声に強弱をつけてメリハリをつけるように伝えることなどがあげられます。
質問できる会話のテンポを意識する
服薬指導をおこなう際には、患者さんが積極的に質問ができるよう会話のテンポも意識することが大切です。
例えば、ヒアリングから薬の説明まで情報を一方的に一気に伝えてしまうと、患者さんは質問する余地がなくなってしまいますし、情報がすべて頭に入らない可能性もあります。
薬の説明をしたら一旦余白を設け、その後副作用の説明をするなど、相手がいざとなったら口が挟めるようなテンポを作ることも薬剤師には求められます。
しっかり患者さんが情報整理をして疑問点に気づかせるという意味でも、会話間の余白は大切です。
専門用語は使わない
薬剤師の服薬指導では、専門用語を使わないことが大切です。
薬剤師は大学などで薬学について学んだいわばプロフェッショナルです。しかし、薬学に精通していない患者さんの多くは薬剤師にとっては当たり前の言葉や専門用語を理解できません。
薬剤師には、服薬指導の際に専門用語を使わず、薬学にまったく精通していない人でもわかりやすいように説明できる力が必要です。
誰もがわかる言葉で説明することで、より丁寧な服薬指導にもつながります。
常に最新の情報を捉える意識を持つ
薬剤師は医薬品や薬物治療に関する最新の情報を捉える意識を持つことが大切です。
医学が進歩した昨今では、新しい新薬が次々に登場しています。
薬剤師には患者さんの相談にのりアドバイスができるよう、流行り病や流行しているサプリ、今のトレンドや新薬の情報など最新の情報を敏感にキャッチしていくことが求められます。
薬のプロフェッショナルとして、いつでも最新の薬学知識を患者さんに役立てられるよう、常日頃から知識をアップデートするように心がけましょう。
服薬指導後のSOAP薬歴の書き方
薬剤師は服薬指導後に患者さんの薬歴をつけていきます。
薬歴とは、調剤や服薬指導、患者さんの基礎情報、体質、疾患などを記録しておくものです。
また、「薬剤服用歴管理指導料」の算定要件に挙げられている薬歴に記載するべき内容は以下の内容となっています。
薬歴に記載すべき内容
- 服薬状況
- 残薬確認
- 体調変化
- 併用薬
- 既往歴
- 他科受診
- 副作用
- 飲食物
- 後発品の意向
- 手帳の有無
- 服薬指導の要点 など
現在の薬歴は、「SOAP方式」が主流となっています。SOAP方式とは、薬歴の記載方法で薬剤師以外の医師や看護師などのカルテもSOAP方式で記録されています。
つまり、SOAP方式で記載することで医師や看護師、薬剤師の誰が見ても瞬時に状況を把握しやすいように薬歴をつけることができます。
SOAP方式
- Subjective Data (主観的情報)
- Objective Data (客観的情報)
- Assessment (分析・評価)
- Plan (計画)
SOAP方式で薬歴を記録するには、下記のように情報を分けて記載していきます。
Subjective Data 主観的情報 |
患者さんの話す内容や考え方などを記載 【例】 ・患者さんの相談事 ・病気の自覚症状 ・生活環境 ・嗜好 など |
---|---|
Objective Data 客観的情報 |
問診票や服用歴などから得たデータを記載 【例】 ・患者さんの体質 ・アレルギーの有無 ・職業 ・服用歴 ・検査値 ・併用薬 など |
Assessment 分析・評価 |
SとOの情報に基づいた薬剤師としての分析と評価を記載 【例】 ・処方監査 ・副作用 など |
Plan 計画 |
SとOとAの情報に基づいた薬剤師の服薬指導内容とフォロー内容を記載 【例】 ・患者さんへの指導事項 ・医師への問合せ内容 ・調剤の工夫 |
薬剤師の服薬指導に関するよくある質問
ここでは薬剤師の服薬指導に関するよくある質問をまとめました。
薬剤師の服薬指導について更に詳しく知りたい人はぜひ参考にしてみてください。
薬剤師による服薬指導の義務化はいつからなのか
薬剤師
薬剤師による服薬指導の義務化はいつからですか?
末永
薬剤師の服薬指導が義務化されたのは、2020年9月の改正薬機法が施行されてからです。
「かかりつけ薬剤師」として、調剤業務だけでなく患者さんに対する業務に比重をおくことが求められており、服薬指導は患者さんに対するメイン業務となっています。
説明はいらないから安くしろと言われた場合
薬剤師
説明はいらないから安くしろと言われた場合どうすればよいですか?
末永
薬剤師がおこなう服薬指導は、薬剤師法第25条の2で義務付けられている業務であるため割愛することができません。
そのような場合には、要点だけを簡潔に伝えるなど服薬指導のボリュームをコントロールするといった工夫をしてみましょう。
また、服薬指導を割愛することで薬は安くならないため、薬を安く抑えたい患者さんにはジャネリック医薬品をおすすめしましょう。
薬剤師の服薬指導で英語力は必要か
薬剤師
薬剤師の服薬指導で英語力は必要ですか?
末永
外国籍の患者さんが多い地域では、英語での服薬指導が必要になることもあります。
また、日本と海外の薬の名称の違いなどもあり患者さんが混乱することもあるため、外国籍の多い薬局ではその点も注意しなくてはなりません。
厚生労働省の発表する「患者のための薬局ビジョン」にもあるように、患者本位の医療分業の実現に向けて、服薬指導は非常に重要な役割を果たすとされています。