理学療法士はやめとけと言われる理由は何?転職支援のプロが徹底解説

理学療法士はやめとけと言われる理由は何?転職のプロが徹底解説

    理学療法士の仕事がどうしてやめとけと言われるのかを、転職支援のプロが理由とともに徹底解説します。

    実際の理学療法士の辛さ・やりがい・業界の将来性だけでなく、多様な職場ごとの違いも合わせて紹介します。

この記事を書いた人
末永雄大

末永雄大

新卒でリクルートエージェント(現リクルート)に入社。数百を超える企業の中途採用を支援。2012年アクシス(株)設立、代表取締役兼転職エージェントとして人材紹介サービスを展開しながら、年間数百人以上のキャリア相談に乗る。Youtubeチャンネル「末永雄大 / すべらない転職エージェント」の総再生回数は2,000万回以上。著書「成功する転職面接」「キャリアロジック
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理学療法士はやめとけと言われる理由

理学療法士は、国家資格を必要とする職業で世間的に安定した職業だと見られることが多いです。しかし、こうした世間的な見方に反して、ネットの検索サジェストでは「理学療法士 やめとけ」のようなネガティブなワードも頻繁に見られます。

そこで、まずはなぜ「理学療法士はやめとけ」のようなネガティブな声が聞かれるのか、その背景と原因を大きく3つの観点から解説していきます。

年収が低い

ネガティブな声の最も大きな理由となっているのが年収です。理学療法士の年収に関しては「平均年収が低い」 「年次による将来的な年収が伸びにくい」という声が多く聞かれますね。

では、職業全体で見た時に理学療法士の給与の実態はどうなっているのか、統計データをもとに見ていきましょう。

令和5年賃金構造基本統計調査によると、理学療法士を含むリハビリ職(PT・OT・ST・視能訓練士)の平均年収は、給与所得者全体平均の約464万円より、やや低い水準になっています。

理学療法士 給与所得者平均
年収 434万円 464万円
※参照:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査
※平均年収=「決まって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

また、平均年収を年齢階級ごとに整理するとこのようになります。

理学療法士 給与所得者平均
20~24歳 344.2万円 304.4万円
25~29歳 389.1万円 377.2万円
30~34歳 421.4万円 433.2万円
35~39歳 455.5万円 481.0万円
40~44歳 497.6万円 513.8万円
45~49歳 518.0万円 536.9万円
50~54歳 515.0万円 557.9万円
55~59歳 570.2万円 561.6万円
60~64歳 462.8万円 447.8万円
※参照:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査
※平均年収=「決まって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

理学療法士の年収は、20代のうちは給与所得者平均を上回りますが、30代から50代後半までは平均をやや下回る水準を推移します。

このことから、理学療法士は一般的な職種と比べると年次による昇給幅が少なめであり、給与の伸び悩みを感じやすいと言えますね。

一方で、20代の給与は一般的な職種よりも高く、初任給に関しても約25万円と、一般的な専門学校卒業者の初任給(約22万円)を上回る額になっています。

末永雄大 末永

理学療法士は、初任給や20代の年収は一般平均より高い水準ですが、昇給という観点では年齢による伸びが少ないのが現状です。


とくに、30代になるタイミングあたりでは給与面に対する不安を感じる人が多い印象ですね。

以下の記事では、理学療法士の給与の伸びが少ない背景や、収入を上げる方法などを詳しく解説しています。

定年まで働く厳しさ

理学療法士の定年退職の時期は一般的に60歳~65歳と言われており、慣れている業務も年を重ねるにつれて体力的に辛くなってくる場合もあります。

介護老人保健施設などでは、本来のリハビリ業務に加えて、患者の日常生活を支える介護的な役割も要求される場合があり、身体的・精神的負担に拍車をかけるようなケースも一部あるようです。

末永雄大 末永

理学療法士の治療の特性上、体力を使う業務比率が高いことに加えて、一部の過酷な労働環境が強調され、ネガティブな声を増幅させている側面もあります。

精神的負担が大きい

理学療法士は、患者の人生に深く関わる、とてもやりがいのある職業です。しかし、その責任の重さは、時として自分の心を苦しめてしまうことがあります。

例えば、熱心にリハビリを行っても症状が思うように改善しないときの無力感や、患者の「こうしたい」という想いと、医師の判断との間で板挟みになり、思い悩んでしまうこともあります。

こうした日々のプレッシャーに加え、「これほど重い責任を担っているのに、待遇が見合っていないのでは…」という葛藤も重なると、心が疲弊してしまうのも想像に難くありません。

末永雄大 末永

1つひとつの出来事は乗り越えられても、こうした複合的なストレスが積み重なることが、「この仕事を続けるのは難しいかもしれない」と感じたり、「理学療法士は大変だ」と言われたりする一因と言えますね。

理学療法士が辛いと感じること

ここまで、理学療法士に対して「やめとけ」のようなネガティブな見方がある背景について解説しましたが、現職の理学療法士が実際に感じる業務の辛いこととは何なのでしょうか。

これまでキャリア支援をしてきた人の声や、SNSで多く見られる意見を3つ紹介していきます。

納得のいく理学療法を提供できない

現職の理学療法士が辛いと感じる理由の1つ目は、自分の納得のいく治療を行えないことです。

理学療法士は、医師の指示がないと理学療法を提供することができません。そのため、医師の指示に従いつつ、患者の意見を取り入れた施術をすることが求められます。

医師が自分の提案する治療を承認してくれない場合は、自分が思うような施術ができず、また、医師と患者の間に認識の齟齬が生じ、理学療法士が両者の板挟みになることもあります。

実際にYahoo!知恵袋では、以下のような投稿が見られました。

お医者さまの立場でのみ物事を考える医師と連携がうまくとれないことに嫌気がさし、独立開業の道を選択しました。

Yahoo!知恵袋

このように、医師や医療チームメンバーから理解が得られなかったり、患者との折衝が難しかったりすることで、悩みを抱えてしまう人もいるようです。

末永雄大 末永

職場を選ぶ際には、自分の理想とする理学療法が実現できそうかという視点は意外に見落としがちなポイントです。


施設の理念に共感できるか、教育体制は整っているか、などを事前に見極めることが、納得感を持って働き続けるための重要な鍵となります。

休日出勤や残業時間が多い

現職の理学療法士が辛いと感じる理由の2つ目は、休日出勤と残業時間が多いことです。

理学療法士の多くが働く病院では、入院している患者がいるため休日出勤が求められやすい環境です。

末永雄大 末永

とくに病院において、急性期は慢性期に比べ、患者の入れ替わりが激しく、重症度や緊急性が高い患者が多いため休日出勤の頻度が多くなります。

残業時間に関しては、令和5年賃金構造基本統計調査によると、およそ2時間となっています。

しかし、実際は職場環境によって勤務時間外での仕事を求められることもあるので注意が必要です。

病院ではとくにカルテやリハビリテーション実施計画書といった書類作成に加えて、他職種との会議などが主な残業理由となっています。

その一方で、介護老人保健施設・診療所では利用者へのサービス提供時間が明確に決まっていることが多く、1日のスケジュールが立てやすいため、比較的定時で退勤しやすい環境が整っています。

理学療法士の主な残業理由

  1. カルテ記入・リハビリ計画書や報告書の作成
  2. 学会・研修会の準備
  3. カンファレンス(会議)の準備
  4. 新人・実習生の指導

「勉強熱心なのが当たり前」という風潮が強く、これらの項目が時間外で行われる場合もあります。

加えて、経営難などの理由から、残業代の支払いに消極的だったり、勤怠管理が杜撰だったりする職場もいまだにあるようです。

自分の望む働き方ができない

現職の理学療法士が辛いと感じる理由の3つ目は、価値観の相違が原因で自分の望む働き方ができないことです。現職の理学療法士のYouTube動画では、以下のような意見が見られました。

価値観の相違

  1. 患者を最優先に考えた臨床を実践したいが、単位のノルマが多く患者1人ひとりに対して丁寧に向き合うことができない。
  2. 週最大数の24単位を取りたいが、残業に否定的な同僚が多く、ワークライフバランス重視の職場で歯がゆさを感じている。
  3. ワークライフバランスを重視したいが、単位優先の職場で週の単位ノルマが21単位あって辛い。

理学療法士のそれぞれの職場では、臨床業務の量・単位のノルマ数など、経験できる業務の幅や種類に差があります。

経営状況や臨床以外の業務量が職場によって異なるため、求められる単位数にも違いが出てきます。

単位数が重視される環境では、規定上限に近い数をこなさなければならないこともあり、逆にワークライフバランスへの配慮がある環境などでは、ノルマが低く設定されていることもあるようです。

末永雄大 末永

自分の求めていることが実現できる職場環境かを、確かめずに就職してしまうと、職場環境や同僚との価値観の違いに、窮屈さや苦痛を感じてしまうことになります。

末永雄大 末永

現職の職場環境や人間関係に不安を抱えている人、理学療法士以外への転職を検討している人は、転職エージェント1度相談してみることをおすすめします。


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末永雄大 末永

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理学療法士がやりがいを感じるとき

ここまで、理学療法士のネガティブな側面について触れてきましたが、もちろんポジティブな側面も多くあります。この章では、理学療法士がやりがいを感じるときについて具体的に解説していきます。

患者の違和感に気づくとき

理学療法士が気づいた患者の違和感が、早期の治療のきっかけとなり、チーム医療の実現に役立った時、大きなやりがいを感じます。

理学療法士が気づいた患者の違和感は、治療を施す上での1次情報として、とても重要です。

理学療法士は1対1のリハビリで患者と密に接するため、深い信頼関係を築きやすい存在です。この関係性により、患者は「何となくの違和感」といった些細な心身の変化も安心して打ち明けられるようになりますね。

理学療法士が察知した1次情報は、迅速な治療の起点になり、チーム医療の質の向上にも大きく貢献します。

患者の回復をそばで見られるとき

理学療法士として、最もやりがいを感じる瞬間の1つに、患者がリハビリを通して身体機能を回復し、自らが立案したプログラムがその助けとなるのを実感できるときが挙げられます。

理学療法の提供の目的は、患者の寝起きや歩行などの基本的動作をサポートすることです。そのため理学療法士は、日常生活の復帰に不安を抱えている最初の状態の患者を担当します。

こうしたゼロの状態からの患者の、「できない」が「できる」に変わる瞬間を最も近くで見届けられることこそ、理学療法士ならではのやりがいと言えますね。

理学療法士は、怪我や病気に絶望していた患者を支援し、患者が自信や笑顔を取り戻す過程をそばで見守ることで、患者の内面にも深く関わっていきます。

患者から感謝されるとき

リハビリの目標を達成した患者から感謝されることは、多くの理学療法士が大きなやりがいを感じる瞬間の1つです。

理学療法士は、とくに患者と時間をともにすることが多く、日々の支援の中で患者やご家族から「ありがとう」と直接感謝される機会が豊富で、やる気や充足感を感じることができます。

なかには、「人生を変えてくれた」と感謝する患者もいて、こうした瞬間に大きな達成感や、理学療法士としてのやりがいを改めて実感するようです。

理学療法士をやめるおもな要因

理学療法士のなかで、違う職場や他業種へ転職する人は、どのような理由やきっかけで転職を考えるのでしょうか。

年次による仕事量の増加

新人の理学療法士は、先輩のアドバイスを参考にして業務に慣れていきます。しかし、年次を重ねると自立した行動がより求められることに加えて、新人の教育なども任され始めることになり、仕事内容がハードになりがちです。

新人教育やマネジメント業務を担当し始めると、勉強時間の確保が難しくなったり、業務時間が増えたりなどで少しずつ不満を抱える人が出てきます。

とくに1年目は先輩の手厚いサポートを受けられますが、徐々に自立した行動や後輩指導が求められるようになり、責任と業務量が増えていきます。

こうした年次による業務の幅や量の増加に対して、給与の伸びが追いついてこないという感覚になりやすいので、より待遇の良い職場に転職しようと考える人が多くなります。

末永雄大 末永

近年では、理学療法士の多くが新卒で入る病院から、訪問リハビリなど給与条件の良い職場に転職する人が増えています。

学び続けることの難しさ

理学療法士のなかには「時間的な厳しさ」や、「モチベーションの維持の難しさ」から継続的な学習に悩みを抱えてしまう人がいます。

勉強会が頻繁な職場では、先輩からのプレッシャーや新人教育の負担が重なることがあります。これらの勉強会は、任意参加とされながら実質的には強制で、サービス残業として扱われるケースも一部ではあるようですね。

結果として、業務や後輩指導に追われて自己学習の時間がなくなり、精神的に追い詰められてしまう人がいます。

一方で、理学療法士の少ない職場では、周囲に学習意欲の高い同僚が少なかったり、そもそも同僚がほぼいなかったりで、モチベーションを保つのが難しくなります。

閉鎖的な環境では勉強会なども開かれにくく、たとえ当初は意欲が高くても、終わりのない学習へのプレッシャーや日々の業務の多忙さから、学習意欲が低下しがちです。

末永雄大 末永

このような状況に対し、例えば勉強会の準備を自身の学習機会と捉えたり、参加者全員にとって有益な内容に工夫したりすることで、学習の負担感を軽減するアプローチも考えられますね。

理学療法士以外のキャリア

理学療法士としてのスキルが、他の業界でどのように活用できるのか気になる人も多いのではないでしょうか。実は、理学療法士の専門性を活用して活躍することができる職種は、いくつかあります。

ここでは、理学療法士として培った知識と経験を活かすことができる異業種や異業界について、実際の声も紹介しながら解説していきます。

理学療法士から整体師

整体師では、理学療法の知識はもちろん、治療の際の計画力や、患者とのコミュニケーション能力を活かすことができます。

理学療法士の治療は医療行為の一環で、医師の指示がないと行うことができませんが、整体師の施術は医療行為ではありません。

そのため、整体師は患者に対して提供できる施術を比較的自由に選択することができます。

理学療法士という肩書を捨てて整体院という形で独立しております。整体院では医師の診断がなく、レントゲンやMRIもないので、難しい部分もありますが、納得できないリハビリを提供していたころよりも今の方が充実しています。

yahoo!知恵袋

また、経営手腕次第で理学療法士時代を大きく超える高収入を目指すことも可能です。

その一方で、医師の診断や精密検査ができないため、問診や触察などの限定的な情報から原因を推測するしかなく、痛みの根本原因や隠れた疾患を見極めることには、技術的な限界があります。

また、国家資格が不要で競争が激しい市場であるため、高い技術力に加えて、集客や経営といったビジネススキルも重要だと考えられます。

メリット 整体師のメリット

  • 提供する施術を自己判断できる
  • 実力次第で高収入を目指せる
  • 理学療法士としての経験値を活かせる

デメリット 整体師のデメリット

  • 精密検査ができず、施術に限界を感じやすい
  • 競争が激しく、独立開業の場合は経営力が必要

理学療法士から医療系の営業職

医療系の営業職では、理学療法士としてリハビリ器具を利用してきた経験や、医療知識を活かすことができます。

患者と直接関わり、機器を実際に使用してきた経験があるため、その効果や具体的な使い方を説得力を持って説明できます。これは、医師や看護師への営業活動において強力な武器となり得ますね。

さらに、理学療法士としての専門知識は、顧客である医療従事者との信頼関係構築に役立ち、導入後のトレーニングやサポートもスムーズに行えます。

また、現場からのフィードバックを製品改良や新製品開発に繋げるなど、医療現場とメーカーを繋ぐ重要な役割も果たせるため、単なる営業担当者以上の貢献が期待されますね。

メリット 医療系の営業職のメリット

  • 理学療法士の臨床経験を活かせる
  • 実力次第で高収入を目指せる

デメリット 医療系の営業職のデメリット

  • 実力主義で競争が激しい
  • 営業力を1から身につける必要がある

末永雄大 末永

理学療法士としての知識・経験を生かせる他業種に興味がある人は、1度転職エージェントに相談してみると良いかもしれません。


とくに、リクルートエージェントマイナビエージェント dodaは支援実績が豊富で、求人の種類や数が豊富なので、転職を迷っている段階の人におすすめです。

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以下の記事では、理学療法士から他職種や一般企業への転職について詳しく解説しています。興味がある人はぜひ読んでみてください。

理学療法士のまま別の職場に転職

理学療法士は活躍の場が多岐にわたるため、理学療法士のまま、より自分に適した職場で活躍することもできます。

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、令和5年度の理学療法士の求人倍率は4.36倍であり、これは平均有効求人倍率の 1.29倍と比べて高く、理学療法士を必要としている職場が多いことが分かりますね。

以下は理学療法士として働ける主な職場です。

それぞれの職場ごとの違いについては、記事の後半で詳しく解説しています。

末永雄大 末永

転職をある程度前提に考えている人は、より専門的なキャリアの相談ができるリハビリ特化のエージェントがおすすめです。


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理学療法士の特性

理学療法士の仕事は、単に身体機能の回復を支援するだけではありません。

ここでは、日々の臨床はもちろん、自分のキャリアを考える上でも重要になる「患者との相互理解」「目標・計画設定」「異業種との連携」の3つの特性を解説します。

患者との相互理解

高いリハビリ効果を出す理学療法士は、患者との相互理解や信頼関係を築く力に長けています。

言葉にならないサインを表情や仕草から汲み取り対話を重ねていくのは、単なる傾聴に留まらない、高度なコミュニケーションスキルです。

末永雄大 末永

この能力は、転職市場においても、患者や他職種と円滑な関係を築ける人材として高く評価されやすい要素です。

目標・計画設定

次に、患者に合わせた目標・計画を設定する力、いわば課題解決能力が挙げられます。

質の高いリハビリを提供するには、患者が納得できる具体的かつ実現可能な目標を設定し、その達成計画を立てる必要があります。しかし、臨床現場では計画通りに進まないことも多くあります。

末永雄大 末永

その際に、状況を的確に分析し、別の方法を試したり、環境に合わせて道具を工夫したりする柔軟な対応力と課題解決能力は、将来的に管理職や教育的な立場を目指す上でも不可欠なスキルと言えますね。

異業種との連携

最後に、異業種との連携です。チーム医療を実現するための協調性とも言えますね。

最適なリハビリは、理学療法士1人では完結しないことがほとんどで、医師や看護師など、専門性の異なるスタッフと連携することが不可欠です。

その中でも、医師は「疾患の治療」、理学療法士は「生活機能の回復」と、それぞれ重視する視点が異なります。この違いを理解し、患者情報を迅速に共有して一貫した方針を築く能力は、職場での信頼に直結します。

末永雄大 末永

こうした協調性は、より大規模な病院や施設、または地域包括ケアといった多様なフィールドで活躍する際に、大きな強みになりますよ。

理学療法士に求められる能力

ここでは、解説した理学療法士の特性を踏まえて、具体的にどのような能力が現場で求められるのかを解説していきます。

患者の違和感に気づく力

理学療法士には、リハビリ中だけでなく、患者の日常生活における些細な変化を敏感に察知して、そこから患者の状態を分析し把握するための深い観察眼が求められます。

理学療法士はこのプロセスを通じて、リハビリで本当に解決すべき根本的な課題点を正確に見つけ出さなければいけません。

これらは、患者のわずかな心理的変化や動作の違いに気づき、より質の高いリハビリを提供する上で非常に重要になりますね。

末永雄大 末永

患者の生活背景や心理まで踏み込む視点は、マニュアル以上の付加価値を生み出します。


こうした洞察力や提案力は、医療チームからの信頼も厚くなり、キャリアアップにも繋がる貴重なスキルです。

課題点を論理的に導き出す力

理学療法士には、検査結果や患者の訴え・生活状況など多様な情報を分析し、何が問題であるか、何を改善すべきかを論理的に導き出す力が必要になります。

患者が訴える痛みや不調の箇所だけにとらわれるのではなく、問診や動作分析から多角的な情報を収集・分析し、症状の裏に隠された根本的な原因を論理的に突き止めていく能力が大切です。

末永雄大 末永

「なぜこのリハビリが必要か」を自らの言葉で論理的に言語化できる能力は、理学療法士としての専門性の高さを明確に示します。


思考プロセスを他者と共有する力は、後輩指導や管理職といった、チーム全体の能力を引き上げる立場で活きるスキルです。

患者の状態から最適を考える力

理学療法士は、患者の身体状態だけでなく、その人の性格や価値観まで考慮し、最適なリハビリを考えるのも業務の一環です。

時には、料理やスポーツといった患者の趣味をリハビリに取り入れ、患者の意欲を引き出す個別性の高いプログラムをつくることもありますね。

このように専門知識を応用し、1人ひとりに最適な価値を提供することが、理学療法士としての価値を高めることにもつながります。

また、患者のタイプは様々です。決められた手順で業務を行うことが多い一般的な仕事とは異なり、セオリーはありつつも個人の特性に合わせてゼロから解決策を考えるのは理学療法士の特徴の1つです。

粘り強く施術を続ける力

患者の回復には時間がかかり、すぐに効果が見えないこともあるため、理学療法士には相手の可能性を信じて根気強く寄り添い、支え続ける忍耐力が不可欠です。

また、患者に伝わるまで説明方法を工夫しながら対話を重ね、粘り強く信頼関係を築き上げていく姿勢も求められます。

これは、短期的な成果が求められることが多いビジネスの世界とは異なり、長期的な視点で物事を捉え、粘り強く取り組む姿勢が常に求められています。

末永雄大 末永

患者の人生の重要な回復期に深く関わるからこそ、理学療法士には強い忍耐力が求められるのです。

その他の理学療法士に求められるスキルとして以下のようなものがあります。

  • コミュニケーション能力
  • 傾聴力
  • 問題解決能力
  • 自己学習能力
  • 協調性
  • 向上心

末永雄大 末永

これらの能力に当てはまる人は、理学療法士としての適性があるかもしれません。


もし理学療法士というキャリアに興味がある場合、リハビリに特化した転職エージェントへ相談してみることをおすすめします。


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理学療法士の業界の将来性

理学療法士に関して、「やめとけ」の他にも将来性を危惧するネガティブな声が散見されます。なぜこのようなネガティブな側面があるのか、また、逆に将来性が期待できるポジティブな側面はあるのかを解説していきます。

理学療法士は供給過多になる

理学療法士のキャリアを考える上で、知っておいたほうがいいことは「供給過多」という課題です。

すでに耳にしたことがあるかもしれませんが、日本理学療法士協会の統計を見ても、理学療法士の養成校と国家試験合格者数はこの数十年で著しく増加しました。

1966年以降の理学療法士試験合格者数の推移 理学療法士、養成校の推移
参照:統計情報 理学療法士協会

この結果、理学療法士の総数が増え続け、需要に対する供給のバランスが崩れつつあるのが現状です。

かつてのように「理学療法士の資格さえあれば安泰」という時代ではなくなってきており、採用のハードルは少しずつ高まっていると言えます。

とくに、自分の強みを明確に示せない場合や、経験が浅い場合には、希望する条件の職場へ転職することが以前より難しくなっています。

高齢化社会により需要が増す

理学療法士が供給過多になる心配の声がある一方で、高齢化社会による需要の増加も見込まれています。

日本は世界有数の高齢化社会であり、今後も高齢者の増加が続きます。高齢になると、運動機能の低下や疾患によりリハビリテーションの必要性が高まるため、理学療法士の需要は増えるという見方もあります。

理学療法士の大半が働く病院では、理学療法士の数が供給過多気味になっていますが、老人福祉施設や訪問リハなどでは、供給が追いついておらず、人手不足の傾向がありますね。

末永雄大 末永

高齢化社会が進むにつれて、とくに老人福祉施設や、訪問リハビリテーションでの理学療法士の需要が増すと考えられていますね。


とくに、訪問リハビリや自費リハビリは業界の中でも需要増加が注目されています。


昨今の医療業界の大きな転換のなかで将来的なキャリアを考える際には、働き方の変化や職場ごとの需要の変化も考えていく必要がありますね。

理学療法士の職場ごとの違い

最後に、理学療法士の職場ごとの違いを見ていきましょう。理学療法士の職場は、病院以外にもたくさんの選択肢があります。自分の特性や強みにあった職場や、将来の転職先候補が見つかるかもしれませんよ。

病院

病院勤務の理学療法士は医師・看護師・作業療法士・言語聴覚士・ソーシャルワーカーなどの多職種と密に連携し、患者の情報を共有しながらチームとして治療方針を決定・実行します。

そして、内科から外科まで多岐にわたる幅広い科の患者を担当するため、それに応じた多くの知識が求められるという難しさもあります。

その一方で、同僚の理学療法士が多いため、専門的な課題に対してチームで協力し合えるという大きな利点もありますね。

クリニック・診療所

クリニック・診療所の特徴は、患者が整形外科の患者に限定されることです。そのため、1人の理学療法士が担当する患者や症状が、固定されやすい傾向にあります。

また、理学療法士が1人しかいない「1人職場」の環境も珍しくありません。臨床で判断に迷ったときや、難しい症例について気軽に相談できる同僚がおらず、孤独感やプレッシャーを感じることがあります。

また、病院に比べて昇進などのキャリアパスが限られているため、勤続年数が長くなっても給与が上がりにくい傾向があります。経験を積んでも給与に反映されにくいことに、将来的な不安を感じる人もいますね。

末永雄大 末永

患者の医療分野が限定されることから、 比較的臨床に集中しやすい職場環境が多いですね。

リハビリテーションセンター

リハビリテーションセンターは、通所型と訪問型の2種類に分かれます。

通所リハビリテーションセンターは、高い意欲を持つ比較的軽度な症状の患者が、自力で通う施設です。施設では、充実した設備を用いて、個別訓練や集団体操といった多彩なリハビリが展開されます。

また、この場は、機能回復の場であると同時に、利用者同士の交流の場でもあり、地域連携の場としての役割も担っています。

訪問型リハビリテーションセンターは、理学療法士が通所が困難な患者の自宅へ訪問する業務形態です。そのため通所型リハビリテーションセンターに比べて、重度の症状を持った患者を対象としています。

また、通所型とは異なり「玄関の段差の上り下り」など、患者の日常生活の場でリハビリをします。

末永雄大 末永

手すりの設置場所の提案から福祉用具の選定といった環境調整まで、患者の生活に関わる判断を1人で担います。


他の職場以上に判断能力や柔軟な対応力が求められる特徴がありますね。

介護老人保健施設

介護老人保健施設の主な目的は、在宅復帰です。とくに、食事や入浴といった実際の生活動作の能力を引き上げることに重点が置かれます。

加齢により劇的な機能回復が望みにくい患者が多く、リハビリの焦点が機能維持に置かれがちであるため、目標達成が叶わない無力感や、多職種・家族との調整の難しさに直面することがあります。

また、介護職員が不足している介護老人保健施設では、送迎や食事介助といった介護業務を理学療法士が兼務せざるを得ない状況も少なくありませんね。

その結果、専門職としての能力を発揮できないというジレンマに陥り、理学療法士としての仕事の満足感を得にくくなるケースが起きています。

末永雄大 末永

ケガや病気の治療を目的としたリハビリが中心の病院とは異なり、介護老人保健施設は在宅復帰を目的としリハビリを行います。


そのため、病院に比べて症状が安定した患者が多い傾向にあり、不測の事態が起きにくく、リハビリを行いやすい職場です。

児童福祉施設

児童福祉施設の対象者は子供であるため、理学療法士は子供の人生の基盤作りに関わることになります。そのため子供の成長をともに支えるパートナーとして、保護者や多職種と密に連携することが不可欠です。

児童福祉施設でのリハビリの難しさは、言葉で意思をうまく表現できない子供の可能性を信じ、年単位の長期的な視点で成長を焦らず見守らなければならない点です。

子供によっては、指示が伝わりにくかったり感情のコントロールが難しかったりするため、より一層の根気と工夫が求められますね。

子どもたちのリハビリは、楽しい「遊び」が求められます。そのため、理学療法士には、身体機能に関する専門知識を応用し、1人ひとりの発達段階や興味に合わせた遊びを創造する、高い専門性が求められます。

この「遊びを治療に変える」プロセスは、理学療法士としての創造性やスキルを大いに発揮できる場面であり、大きなやりがいを感じられます。

末永雄大 末永

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