退職代行は非弁行為で違法?弁護士がいないと違反?利用の際の注意点を解説

退職代行は非弁行為で違法?弁護士がいないと違反?利用の際の注意点を解説

    退職代行業者のサービスは非弁行為で、弁護士法の違法・違反となるのか解説していきます。退職代行を利用する際は、問題点や注意点を理解しておくことが大切です。

    会社と不要なトラブルを起こさないために、従業員側が退職代行について深く知る必要があります。

この記事を書いた人
末永雄大

末永雄大

新卒でリクルートエージェント(現リクルート)に入社。数百を超える企業の中途採用を支援。2012年アクシス(株)設立、代表取締役兼転職エージェントとして人材紹介サービスを展開しながら、年間数百人以上のキャリア相談に乗る。Youtubeチャンネル「末永雄大 / すべらない転職エージェント」の総再生回数は2,000万回以上。著書「成功する転職面接」「キャリアロジック
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退職代行とは?サービス概要を解説

退職代行サービスは、退職を希望する従業員に代わって退職の意思を企業に伝えたり、退職手続きをサポートしたりするサービスです。

サービス業者が退職連絡を代行してくれるため、利用者は自分で企業に対して直接退職を伝える必要がなく、退職に関する精神的な負担を大きく軽減できる点が特徴で、特に20代の若い世代で注目が集まっています。

退職代行のサービス例

  • 退職の意思表示の代行
  • 退職手続きのサポート
  • 有給消化の交渉
  • 会社との連絡窓口の代行
  • 未払い給与の請求や、損害賠償の請求への対応  など

電話やメールで退職代行業者に相談することで利用が可能であり、サービス内容、料金相場は3万~5万円程度が一般的です。

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退職代行は「退職意思は本人が伝えるべき」「ありえない」と否定的な意見がある一方で、若手世代を中心に急速に支持を集めるサービスです。


会社と直接退職のやり取りをしなくても良い点にメリットを感じ、パワハラやセクハラが原因で職場に行きたくない人、退職を言い出す勇気がない人などに多く利用されていますね。

退職代行サービスの3つの運営形態

退職代行はサービスの提供形態の違いや特徴から、大きく3つに分けることができます。

退職代行サービスの3つの運営形態

  • 一般企業型の退職代行

    退職代行を専門とする民間企業が提供するサービスで、利用者に代わって退職の意思を会社に伝えることが中心。退職の意思表示と書類手続き代行が主なサービス内容であり、いわゆる「伝言サービス」に近い形態。


    法的なアドバイスや交渉など、労働問題に関する専門的な対応は不可。比較的安価かつスピーディーに利用できるので、利用のハードルは低いものの、複雑なケースへの対応には限界がある。

  • 労働組合型の退職代行:

    労働組合が提供する形態で、利用者は一時的に組合に加入し、組合員として団体交渉権を活用したサポートを受けられる。労働組合法に基づく「団体交渉権」を持つため、雇用主との交渉や未払い賃金・残業代の請求など、一般企業型よりも一歩踏み込んだ対応が可能。


    料金は組合費として月額数千円程度かかるほか、退職代行にかかる費用として3〜6万円程度が一般的。法的にも認められた権利行使として、より強い立場で退職交渉を進められるのが特徴。

  • 弁護士型の退職代行:

    法律の専門家である弁護士が提供する退職代行で、退職の意思伝達だけでなく、労働条件や退職金、未払い賃金などの法的交渉まで一貫して対応可能。法律相談や示談交渉なども適法に行えるため、複雑なトラブルや法的紛争を含むケースに向いている。


    最も安心できるサービスだが、費用は5〜10万円程度からと高額であり、一般企業型・労働組合型と比較すると、即日対応は難しい可能性がある。

単純に会社を辞めたいだけなら民間企業のサービスで十分ですが、退職日・退職金など労働条件について会社と交渉したい、未払い賃金や残業代の請求交渉をしたいなど、より専門的なサポートが必要な場合は、労働組合型・弁護士型のサービスを選択しましょう。

簡単にそれぞれのサービスの特徴をまとめると、以下のようになります。

特徴 交渉力 法的対応 費用相場
一般企業型 退職代行を専門とする企業が提供。退職意思の伝達が中心。
費用が安く、迅速対応が可能。
不可 30,000〜50,000円
労働組合型 労働組合が提供。労働法に基づき一定の交渉が可能。
労働組合への加入が必要な場合がある。
部分的に可能 50,000〜80,000円
弁護士型 弁護士が提供し、法的トラブルや損害賠償対応が可能。
費用は高額。
可能 80,000〜150,000円

それぞれに特徴やメリット・デメリットは異なります。自分の状況や希望内容に合わせて適切なサービスを選ぶことが大切ですね。

退職代行は非弁行為で違法になる?

退職代行に関して「非弁行為」「違法」など、ネガティブな口コミを見て、退職代行を利用することで、法的なトラブルに巻き込まれるのでは?と不安に思う人が多くいます。

結論からいうと、民間の一般企業型の退職代行サービスでは非弁行為(弁護士法第72条違反)に該当する恐れがあります

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メガホン 末永からのアドバイス

モームリやEXITなど、民間の一般企業型の退職代行サービスは、利用者の退職意識を、利用者に代わって会社に伝えることが主な役割です。


もちろん、各社ともに非弁行為にあたらないようサービス内容は精査されていますが、万が一法律に関する交渉や請求行為、法的な助言をした場合、非弁行為にあたる可能性がありますね。


基本的に非弁行為により利用者自身が罰せられることはありませんが、退職代行会社のずさんな対応によりトラブルが拡大した場合は、利用者への聞き取りなど法的なリスクがないとはいえません。

なお、労働組合による退職代行は弁護士による対応ではありませんが、労働組合は会社と交渉する権利(団体交渉権)が法律で認められています。

裁判による慰謝料請求などは対応できないものの、有給消化や未払い賃金の請求など、民間の一般企業型サービスよりも強い交渉力を持つのが特徴ですよ。

ちなみに、モームリの評判については下の記事にまとめています。気になる人はあわせてごらんくださいね。

非弁行為とは

非弁行為とは、弁護士資格のない者が報酬を得て法律事務を行う行為を指します。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法 第九章 第七十二条

退職代行は比較的新しいサービスのため、判例も不十分で法的な解釈は確定していません。

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とはいえ、今後判例が増加していくことで、解釈に変化がある可能性はあります。


他業種における判例を参考にすると、未払い給与の請求交渉、損害賠償や退職金の請求、パワハラやセクハラへの法的対応、労働条件の改善交渉などが該当すると考えられていますよ。

【事例付き】退職代行で非弁行為となる恐れのあるケース

民間の一般企業型の退職代行サービスを利用すると、非弁行為に該当する恐れがあることを解説しました。では、実際にどのような行為が非弁行為にあたるのでしょうか?

ここでは、非弁行為にあたると考えられる具体的なケースを4つ紹介します。

本人に代わって未払い残業代の支払い交渉

未払い残業代の請求は、労働基準法に基づく権利の主張です。

単に「未払い残業代があるようです」と伝えるだけであれば問題ありませんが、企業に対して未払い残業代の支払いを求める場合、法的な権利を主張して金銭請求や交渉を行うことになります。

そのため、一般企業型の退職代行サービスが利用者に代わって企業との間で未払い残業代の支払い交渉は非弁行為に該当する可能性が高い行為だといえますね。

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未払い残業代の交渉が必要なのであれば、弁護士に依頼するか、労働組合を通じて団体交渉として行いましょう。

退職日の調整や有給休暇消化の話し合いや交渉

退職日の調整や有給休暇の消化についての話し合い・交渉も、法的権利の主張を含む場合は非弁行為に該当する恐れがあります。

有給休暇の取得は労働基準法で保障された権利であり、有給休暇の取得交渉や日程調整は労使間の取り決めに関わるため、一般企業型の退職代行サービスが代理交渉を行うと弁護士法違反にあたる可能性がありますね。

具体的には退職の意思を伝えるだけでなく、「〇月〇日まで有給を消化して退職したいので、調整してください」という交渉をするのは注意が必要です。

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一般企業型の退職代行サービスであっても有給休暇の取得自体を伝えることは問題ありません。ただ、交渉が必要な場合は労働組合型または弁護士型を選択するのが良いですよ。

パワハラ・セクハラの損害賠償に関する示談交渉

パワハラやセクハラに関する損害賠償請求や示談交渉は、法的判断や専門知識を要する法律事務に該当します。

そのため、弁護士資格を持たない一般企業型の退職代行サービスや労働組合型の退職代行サービスが、「パワハラによる精神的苦痛に対して〇〇万円の損害賠償を請求する」など、個別の損害賠償請求や示談交渉を行うことは非弁行為に当たる行為だといえますね。

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このような交渉が必要な場合は、弁護士型退職代行サービスに依頼するようにしましょう。

退職に関する法的権利を詳細に説明する

退職代行サービスの利用者に対して、サービス提供元が退職に関する法的権利を詳細に説明することも、場合によっては非弁行為に該当する可能性があるので注意が必要です。

一般的な情報提供であれば問題ありませんが、個別のケースに応じた法的判断や具体的な権利の有無について助言することは、弁護士の独占業務とされています。

たとえば、「即時解約の可否」「退職金の計算方法」「不当解雇の訴え方」など、具体的なケースに応じた法的助言を行うことは法律相談と判断される可能性もありますね。

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法律の解釈や適用に関する詳細な説明を求める場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

退職代行を利用する際の注意点

退職代行を利用する際、不要なトラブルに遭遇しないためには何に気を付けたらよいのでしょうか。

ここでは、退職代行を利用する際の3つの注意点を紹介します。

退職代行に依頼しても100%退職できるとは限らない

退職代行サービスを利用しても、必ずしも退職が成立するわけではありません。

契約社員の場合は契約期間途中の退職が認められなかったり、会社で定められた手続きに従わないと退職が出来なかったり、といった理由から、一方的に退職意思を示すだけの退職代行サービスでは、退職が認められないケースもあります。

また、重要なプロジェクトのリーダーや責任者を担っている場合や、役員・管理職の立場では一般従業員より退職に制約がある場合もありますね。

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特に民間の一般企業型退職代行サービスでは退職に関する交渉はできません。意図や状況に合わせたサービスを選択することが大切です。


複雑なケースの場合は弁護士による退職代行サービスを利用するのをおすすめします。

公務員は退職代行サービスを利用できない可能性がある

国や地方自治体に努める公務員は、退職手続きが民間企業とは異なり、国家公務員法や地方公務員法で規定された手続きに従う必要があります。

本人が直接退職願を提出することが原則で、民間企業以上に厳格な業務引継ぎや職務継続性の確保が求められるため、一般企業型の退職代行サービスでは退職できない恐れがありますね。

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公務員の方が退職代行を希望する場合は、人事担当部署に直接相談するか、それぞれの職員団体・公務員法に詳しい弁護士へ相談するようにしましょう。

最低限の「引継ぎ」は必要

退職代行サービスを利用する場合でも、最低限の引継ぎは必要です。

退職者がいきなりいなくなると、業務が停滞し、同僚や取引先に影響を与える可能性があります。場合によっては債務不履行や信義則違反とみなされる可能性もあるので注意が必要です。

特に、自分しか知らない業務内容やパスワード、取引先との関係などがある場合は、それらの情報を適切に引き継ぎましょう。

末永雄大 末永

直接対面での引継ぎが難しい場合でも、引継ぎ書の作成や電子メールでの情報共有、マニュアルの整備などで対応すると良いですね。

円満退職・キャリア継続のためには転職エージェントの利用がおすすめ

退職を考えるのであれば、ただ職場を離れるだけではなく、退職を新しいキャリアへの第一歩と捉えることが重要です。

退職代行サービスを使うことで退職自体はスムーズに進んだとしても、その後のキャリア設計をしっかりと行わなければ、新たな職場選びに時間がかかってしまう可能性もあります。

末永雄大 末永

そこで、退職を決意した時点で、並行して転職活動を始めましょう


特に、転職エージェントを活用することで、あなたのスキルや経験にマッチした求人を効率的に探し、転職成功率を高めることができますよ。

転職エージェントのサポート内容例

  • 求人の選定
  • キャリア相談
  • 履歴書・職務経歴書の書き方アドバイス、添削
  • 面接対策
  • 応募先施設との面接調整やフォロー
  • 職場見学や面接の同行
  • 給料や待遇などの条件交渉
  • 転職後のアフターフォロー など

転職エージェントは経験豊富なキャリアアドバイザーが、求職者一人ひとりと並走しながら、求人紹介や応募書類の添削や面接対策といった選考対策、応募先企業とのやり取り代行など、転職活動を総合的にサポートします。

初めての転職で不安を感じている人はもちろん、次のキャリアで理想通りの職場を見つけたい人など、転職に関して不安や悩み・要望がある人はぜひ前向きに利用してみましょう。

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