
病院薬剤師の仕事内容とは?1日の流れ・年収・やりがいを解説
病院薬剤師の仕事内容は、調剤だけでなく病棟業務やチーム医療まで幅広く、外からは見えにくい部分が多い仕事です。9つの業務内容と1日の流れ、平均年収、やりがいや大変さ、向いている人の特徴まで、現役アドバイザーの視点で解説します。
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病院薬剤師とは?薬局薬剤師との違い
病院薬剤師は、病院の中で入院患者や外来患者の薬物治療を支える薬剤師です。
処方箋をもとに薬を用意する点は薬局薬剤師と同じですが、医師や看護師と同じ医療チームの一員として、治療そのものに深く関わる点が大きく違います。
薬局薬剤師の仕事は、外来患者への調剤と服薬指導が中心です。一方の病院薬剤師は、入院患者の病棟業務、注射薬の調製、チーム医療への参加、治験、救急対応まで業務の幅が広くなります。
働き方の面でも違いがあります。多くの病院では当直や夜勤が発生するため、生活リズムは薬局勤務より不規則になりがちです。その分、専門性を深めやすい環境が整っているのも特徴です。
仕事内容や年収の細かい比較は、こちらの記事で詳しくまとめています。

同じ薬剤師でも、1日の動き方や関わる相手はかなり変わります。
患者や治療にどこまで踏み込みたいかで、向いているほうが見えてきますよ。
病院薬剤師の主な仕事内容9つ
病院薬剤師の仕事は、薬を用意する調剤だけではありません。入院患者の治療支援から医薬品の管理、医療チームへの参加まで、大きく9つの業務に分かれます。
それぞれの現場でどんなことをしているのかを具体的に見ていきます。
調剤・製剤業務
病院薬剤師の土台となるのが、調剤と製剤の業務です。外来患者だけでなく、入院患者に使う内服薬や外用薬も、医師の処方をもとに用意します。
病院では、市販の薬では対応できない特別な薬を院内で作る製剤業務も担います。子ども用に量を調整した薬や、市販されていない濃度の消毒液などがその一例です。
規模や診療科によって扱う薬は変わり、抗がん剤や点滴などの注射薬を扱う機会が多いのも病院ならではの特徴です。
患者の症状に合わせて調剤するため、薬剤師の技量が問われる仕事になります。
医薬品管理業務
医薬品を安全に、そして切らさずに使えるよう管理するのも大切な仕事です。薬の在庫や使用期限、保管する温度や湿度まで細かく目を配ります。
在庫が減れば発注をかけ、いつでも患者に薬を届けられる状態を保ちます。使用期限を過ぎたり保管状態が悪かったりすると、薬の効果が落ちるだけでなく副作用が強く出るおそれもあるためです。
とくに医療用麻薬や向精神薬など、法律で厳しく管理が求められる薬もあります。誰が・いつ・どれだけ使ったかを正確に記録する責任の重い業務です。
医薬品情報業務(DI業務)
医薬品情報業務は、薬の効果や投与量、副作用などの情報を集めて、院内の医師や看護師、患者に届ける仕事です。DI業務とも呼ばれます。
厚生労働省や製薬会社から出る新しい情報をいち早くつかみ、院内スタッフからの問い合わせに答えます。「この薬と一緒に飲んで大丈夫か」といった質問に、根拠をもって回答する役割です。
臨床の現場で新しい副作用が見つかった場合に、厚生労働省へ報告するのもこの業務の一つです。病院全体の薬の使い方を、情報の面から支えています。
病棟薬剤業務
病棟薬剤業務は、入院患者一人ひとりに寄り添って薬物治療を支える仕事です。ベッドサイドまで足を運び、患者と直接話すことが多くなります。
入院時には、今飲んでいる市販薬や持病の薬、アレルギーの有無を細かく聞き取ります。そのうえで、正しい飲み方を指導し、服用後の効果や副作用も確認していきます。
退院後も自宅できちんと薬を続けられるよう指導するのも役割です。患者との距離が近く、回復していく様子を間近で感じられる業務でもあります。
外来業務・外来化学療法
外来に通う患者に対し、薬の使い方や量を指導するのが外来業務です。近年は「薬剤師外来」として、独立した窓口を設ける病院も増えています。
とくに広がっているのが外来化学療法です。医療の進歩で、入院せずに通院しながら抗がん剤治療を受けられるようになり、薬剤師の関わりが欠かせなくなりました。
副作用の状態を確認しながら投与量を医師と相談したり、自宅で自己注射をする患者に打ち方を教えたりします。通院治療の安全を支える、専門性の高い仕事です。
治験業務
治験業務は、新しい薬を世に出す前の臨床試験に関わる仕事です。病院のような医療機関で、担当医師と連携しながら進めていきます。
治験で使う「試験薬」は、効果や安全性がまだ確かめきれていないため、厳密な管理と保管が必要です。この試験薬を適切に管理・記録するのが病院薬剤師の役割になります。
治験コーディネーターとして、患者への説明や来院スケジュールの調整に関わることもあります。新薬開発という医療の最前線に立ち会える業務です。
救急救命業務
救急外来を持つ病院では、緊急性の高い患者への対応も病院薬剤師の仕事です。治療の中心は医師ですが、薬の専門家として迅速な判断が求められます。
中毒を起こした患者にどの薬で対処するか、複数の薬を使うときに危険な組み合わせがないかなど、その場で確認していきます。一刻を争う場面での冷静な対応が必要です。
すべての病院に救急対応があるわけではありませんが、担当する場合は薬剤師の知識が人命に直結します。責任は重い一方で、大きなやりがいにつながる業務です。
注射調剤・注射薬混合調製
注射調剤は、医師の処方に従って注射薬を用意する業務です。注射薬は血液に直接入るため、混ぜてはいけない組み合わせや投与量、投与速度に細心の注意を払います。
点滴に薬を混ぜる注射薬混合調製も、この業務に含まれます。とくに抗がん剤の調製は、無菌の環境で安全に行う高度な技術が求められる仕事です。
薬が安全に使われているかをチェックする最後の砦でもあります。小さなミスが患者の命に関わるため、集中力と正確さが欠かせません。

最近は注射薬の調剤をロボット、確認をコンピューターで行う病院も増えています。
自動化の進み方は病院ごとに差があるので、求人先の設備も見ておくと安心ですよ。
チーム医療
チーム医療とは、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などの専門家が集まり、それぞれの強みを持ち寄って治療にあたる体制です。病院薬剤師は、薬の専門家としてこの輪に加わります。
役割分担があるからこそ、一人ひとりが自分の専門に集中でき、質の高い医療を届けられます。薬剤師には、薬の効果や副作用を管理し、処方の提案まで踏み込むことが期待されています。
チーム医療での薬剤師の役割について、厚生労働省は次のように示しています。
●当該専門領域のハイリスク医薬品の適正使用・ハイリスク患者の重点管理を推進する。
●副作用の重篤化回避や治療に難渋する患者への対応について、医師と協働のもと、処方の提案や処方設計を分担する。
●高度な医療判断に備えて医薬品情報を収集し、評価・活用する。
厚生労働省「チーム医療における薬剤師の役割」
薬物療法が高度になり新薬の開発も活発になるなかで、チーム医療における薬剤師の存在感は年々増しています。調剤にとどまらない、薬の専門家としての判断が求められているのです。
病院薬剤師の1日のスケジュール
病院薬剤師が実際にどう動いているのか、1日のスケジュールの一例を紹介します。病棟を持つ薬剤師の日勤を想定したものです。動きをイメージしながら見てみてください。
| 時間 | 仕事内容 |
|---|---|
| 8:30〜9:00 | ミーティング。申し送りと1日のスケジュール確認 |
| 9:00〜10:00 | 調剤業務。その日に使う薬の調剤 |
| 10:00〜12:00 | 病棟薬剤業務。入院患者との面談、退院患者への薬の準備 |
| 13:00〜14:00 | カンファレンスに参加。医師や看護師と情報交換 |
| 14:00〜15:00 | 調剤と監査。注射薬の調剤、検査値をもとにした疑義照会 |
| 15:00〜16:45 | 服薬指導。患者へ服用方法を指導し、気づきを医師や看護師と共有 |
| 16:45〜17:00 | 先輩薬剤師へ相談 |
| 17:00〜17:30 | カルテ記入と翌日分の薬の準備 |
朝は医師や看護師と同じようにミーティングから始まり、申し送りで夜間の患者の状態を共有します。夜勤帯に投与した薬の情報を正確に引き継ぐため、この時間はとても大切です。
日中の大きな特徴が、入院患者との面談です。ベッドサイドで直接様子を確認し、薬の効果や副作用を見ながら投与計画を立てていきます。
日によっては、病棟や薬剤部で勉強会が開かれることもあります。新しい治療や薬の情報を学び、自分の知識を更新できる機会です。

勉強会は勤務時間の外に組まれることもあり、負担に感じる薬剤師もいます。
一方でスキルアップの場と捉える人も多く、学ぶ姿勢を持てる人に向いていますよ。
病院薬剤師のやりがい・魅力
病院薬剤師は年収の面では他業種にやや及ばないものの、それを補って余りある魅力があります。専門性を高めながら、医療そのものに関わっている実感を得られる仕事です。
病院薬剤師のやりがい・魅力
- 薬の専門家として専門性を深めていける
- 医療チームの一員として治療に貢献できる
- 最先端の医療に関わるチャンスがある
- 患者の回復を間近で感じられる
最大の魅力は、薬剤師としての専門性をとことん深められる点です。抗がん剤治療や救急など、薬局では扱わない領域に踏み込めるため、知識と技術の幅が大きく広がります。
医師や看護師と連携して治療を進めるなかで、医療従事者としての手応えを感じやすいのも病院ならではです。化学療法を受ける患者が回復する様子を間近で見られるのも、大きなやりがいです。
仕事のやりがいは、憧れやイメージだけで決まるものではありません。大変な部分も含めて自分に合うかどうかが大切です。専門性を磨くことに面白さを感じられる人にとって、病院薬剤師は満足度の高い職場です。

求人先がどんな環境か、どんな人が働いているかを知ることが、やりがいを見極める近道です。
気になる病院があれば、内部の雰囲気まで転職エージェントに聞いてみるといいですよ。
病院薬剤師の仕事で大変なこと・きついと言われる理由
病院薬剤師は「ブラック」「激務」と言われることがあります。人や病院によって差はありますが、大変だと感じやすいポイントは共通しています。事前に知っておくと、入職後のミスマッチを防げます。
大勢の医療従事者との連携
病院薬剤師は、医師や看護師をはじめ多くの職種と関わるため、コミュニケーションが苦手な人には負担が大きくなりがちです。
それぞれが専門領域に集中している分、連携がうまくかみ合わない場面も出てきます。患者の急変や急患対応など、緊迫した状況ではなおさら意思疎通が難しくなります。
相手の仕事内容を理解し、日ごろから関係を築いておくことが欠かせません。人間関係を丁寧に育てる姿勢が求められる点が、大変さにつながります。
知識のアップデートが追いつかない
医療は日々進歩し、新しい薬や治療法が次々と登場します。病院薬剤師はそのスピードに合わせて、知識を更新し続けなければなりません。
薬局やドラッグストアと比べても、高い専門性を求められる場面が多いのが病院です。薬の専門家として、医師や看護師、患者からの質問に根拠をもって答える必要があります。
勉強会や自己学習で学び続ける努力が欠かせず、この負担をきついと感じる薬剤師は少なくありません。学ぶこと自体を楽しめるかどうかが分かれ目になります。
当直・夜勤の負担
多くの病院では、薬剤師にも当直や夜勤があります。頻度は病院によりますが、生活リズムが不規則になりやすい点は覚悟しておきたいところです。
当直や夜勤は仮眠を取れることもありますが、1人で任される場合や急な入院対応が重なると、休む間もなく動き続けることになります。
1人で判断するプレッシャーもあり、体力・精神の両面で負担を感じる人が多いようです。規則的な勤務を望むなら、当直の有無を求人選びで確認しておきましょう。
体力が必要
病院薬剤師は、調剤室と病棟を1日中行き来し、点滴の入った箱を運ぶこともあるため、思った以上に体力を使う仕事です。
当直や夜勤による生活リズムの乱れも重なり、体力に自信がないと厳しく感じる場面が出てきます。常に集中して調剤ミスを防ぐ緊張感も、疲労につながります。
「病院はきつい」と言われる背景には、こうした身体的な負担があります。無理なく続けるには、自分の体力や生活スタイルと照らし合わせて判断することが大切です。
薬剤師の働き方が実際にブラックなのか、忙しさや休みの実態はこちらの記事で解説しています。
病院薬剤師を辞めたいと感じたときの考え方や適性については、こちらも参考にしてください。
病院薬剤師に求められるスキルと向いている人
病院薬剤師には、薬の専門知識に加えていくつかのスキルが求められます。それを踏まえると、どんな人が向いているのかも見えてきます。自分に当てはまるか確かめてみてください。
病院薬剤師に求められるスキル
病院薬剤師に特に求められるのは、コミュニケーション能力・臨機応変な対応力・管理能力の3つです。専門知識だけでは務まらない仕事だといえます。
- コミュニケーション能力
- 臨機応変な対応力
- 管理能力
コミュニケーション能力は、多職種と連携するチーム医療で欠かせません。相手の仕事を理解し、患者にも薬の使い方をわかりやすく伝える力が問われます。
臨機応変な対応力は、急患や患者の急変に向き合う医療現場で必要になります。予定通りに進まない状況でも、冷静に優先順位を判断する力が求められます。
管理能力は、リスクの高い薬を扱う病院では特に重要です。薬の管理はもちろん、夜勤を含む不規則な勤務でも成果を出せるよう、自己管理する力も含まれます。認定薬剤師など専門資格でスキルを証明する道もあります。
認定薬剤師と専門薬剤師の違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。
病院薬剤師に向いている人
これらのスキルを踏まえると、病院薬剤師に向いているのは、給与よりもやりがいや専門性を重視できる人です。仕事を通じて成長し続けたい人と相性がいい職場です。
体力に自信があり、当直や夜勤を含む不規則な勤務にも対応できる人も向いています。自己管理が得意で、生活リズムを自分で整えられることが前提になります。
興味のある分野を専門的に学びたい人にとっても、病院は理想的な環境です。担当する診療科に詳しくなれるうえ、専門性の高い先輩や同僚から刺激を受けられます。
そして、周りと協調しながら仕事を進められる人が活躍しやすい職場です。専門性が高い職種同士だからこそ、こまめに情報を共有し、積極的に関わる姿勢が信頼につながります。

自分に向いているか迷ったら、客観的な視点での自己分析が役立ちます。
プロの目線でアドバイスがほしいときは、転職エージェントに相談してみてくださいね。
病院薬剤師の平均年収
病院薬剤師の年収は、勤務先の開設者によって差があります。厚生労働省の医療経済実態調査をもとに、病院の種類ごとの年収を見てみましょう。
| 病院の種類 | 平均年収(賞与込み) |
|---|---|
| 国立病院 | 約603万円 |
| 公立病院 | 約627万円 |
| 公的病院 | 約603万円 |
| 医療法人 | 約539万円 |
| その他 | 約550万円 |
| 法人その他全体 | 約581万円 |
出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査」(令和7年実施)
国立や公立の病院は給与水準が高めで、医療法人などはやや控えめな傾向があります。同じ病院薬剤師でも、開設者によってこれだけ幅が出るのが実態です。
業種全体で見ると、病院薬剤師の年収は調剤薬局やドラッグストアと比べてやや低めになりがちです。新卒採用が中心で若手が多いことや、研修中のレジデントが含まれることが理由と考えられます。
一方で病院は昇給が定期的に行われるため、勤続年数が長くなれば年収も着実に上がっていきます。
目先の金額だけでなく、長い目でキャリアを考えることが大切です。
薬剤師の年収を業種ごとに比較したランキングは、こちらの記事で詳しく解説しています。
病院薬剤師として転職・キャリアアップする方法
病院薬剤師として転職やキャリアアップを目指すなら、まず押さえておきたい注意点があります。
それは病院によって経験できる診療科や仕事内容が大きく変わる点です。
総合病院なら幅広い診療科を、専門病院なら特定の分野を深く学べるため、「どんなキャリアを積みたいか」から逆算して選ぶことが大切です。
また、病院によっては薬剤師の立場が弱く意見が通りにくい職場もあります。職場の雰囲気まで見極めたうえで選ばないと、入職後のミスマッチにつながります。
病院薬剤師は、ドラッグストアや薬局と比べると求人数が少なく、転職の難易度がやや高めです。だからこそ、1件でも多くの求人に出会うことが成功の鍵になります。
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以下の記事もお悩みに合わせて参考にしてみてください。
病院薬剤師の仕事内容に関するよくある質問(FAQ)
病院薬剤師についてよく寄せられる質問をまとめました。気になる点があれば参考にしてください。
病院薬剤師はきついですか?
病院により差はありますが、当直や夜勤、体力仕事、知識のアップデートなどで大変さを感じる人はいます。
一方で専門性を深めやすく、やりがいを重視する人には向いています。
薬剤師と看護師はどちらが稼げますか?
一般的には薬剤師のほうが平均年収は高めとされますが、勤務先や夜勤の有無で変わります。
病院薬剤師は昇給で長期的に伸びやすいのが特徴です。
病院薬剤師になるメリットは何ですか?
薬の専門性を深められること、チーム医療で治療に貢献できること、最先端医療に関われることが主なメリットです。
医療従事者としての手応えを得やすい環境です。
病院薬剤師に夜勤は必ずありますか?
必ずではありません。当直や夜勤がない病院や、残業が少ない病院もあります。
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